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桜の園

劇団      :STUDIO コクーン・プロジェクト Vol.6
作       :アントン・チェーホフ
演出      :蜷川幸雄
美術      :
出演      :麻実れい、香川照之、牧瀬里穂、京野ことみ、毬谷友子、菅野菜保之、森塚敏、他
上演会場・日時 :BUNKAMURA シアターコクーン(2003年1月13日)

シアターコクーンには初めて足を踏み入れた。 僕は大学生時代、この劇場から徒歩僅か7、8分の学生寮に住んでいたのだけど、何しろここでかかる芝居は貧乏学生にとってはチケット代が高く、とにかく畏れ多い場所だったのだ。 やっと辛かった学生時代の敵を取ることができた。 あぁ就職決まって良かった。

有名な戯曲だけど「桜の園」のストーリーを簡単に紹介すると、世間知らずで経済観念のかけらもない没落貴族が、借金のかたに土地(桜の園)を競売にかけられて、愛する我が土地から家族バラバラで離れていくというもの。 そこに様々な人間模様がからまって話が進行するのだけど、やがて桜を切り倒す音が聞こえてきて、最後には老僕1人だけが舞台に取り残されるといった感じ。 この話が書かれた19世紀末頃のロシアでは、旧地主・貴族階級の没落(そしてそれに取ってかわる新興ブルジョワジーの台頭)なんて事は頻発していたはずであり、そんな時代風刺も含まれていたのでしょうね。 その後この国は戦争で我が大日本帝國に敗れ、ロシア革命の混乱に巻き込まれていくのだ、ウシシ。

演出については、何しろ世界のニナガワだけに過剰な期待をしていたのだけど、わりとシンプルな味付けで「こんなものかな」と若干拍子抜けした。 でも空間と照明の使い方は巧みで、同じ舞台空間上に、家庭的で暖かい雰囲気、華やかな雰囲気、ガランとした寂しい雰囲気、等々を自由自在に表現している点は流石であった。 役者もそれぞれ個性的で良かったのだけど、特筆しなければならないのが主役の没落貴族を演じた麻実れい。 この人の退廃的、大らか、かつ気品を兼ね備えた演技は絶品で、これだけでも観に来た価値はあった。 この役で彼女の右に出る役者はそうは居ないはずであり、文句なしにキャスティングの勝利だ。 いつもは劇団と演出家だけで観る舞台を選んでいたのだけど、次からはこの人の出演する舞台もチェックしようと思う。

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