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劇団      :にんじんボーン
作       :村上マリコ
演出      :宮本勝行
出演      :山口雅義、蒲田哲、戸谷昌弘、他
上演会場・日時 :ザ・スズナリ(2003年2月11日)

人の暖かさと優しさ、そして儚さが心に浸みる佳作。 あまり期待せずに観に行ったのだけれど、素直に好感を持てる舞台に巡り会えて、じんわりと幸せな気分になれました。 これだから、裏切られても裏切られても、小劇場巡りは止められないのです。

舞台は昭和三十年代始めの夏。 小さな居酒屋。 小説家の家に居候する書生の結婚を巡って、その小説家と彼の周囲の人々が話を展開させていきます。 結婚という非日常的なスパイスが効いてはいるものの、舞台で展開されるのは何て事のない日常の描写。 ただ、幕間の暗転毎に小説家に宛てた手紙の朗読があり(この手紙の主は舞台の最後になってやっと登場するのですが)、これがストーリーに方向性と多層構造を与える素晴らしい効果をもたらしていました。 また、ザ・スズナリという小さくて窮屈な劇場で公演をした事も、濃密な空間を作り出す上で貢献をしたと思います。

この日は、そろそろ朝鮮半島情勢もイイ感じに煮詰りつつあるので、観戦用のコニャックを買って帰ろうと思っていたのだけれど、「人の不幸を楽しむのもナァ」と普通の生活用品だけを購入して帰りました。 こんなに人に優しい気分になれたのは、実に久しぶりの事です。

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