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むりがとおれば

劇団      :俳優座
作       :別役実
演出      :岸田良二
美術      :
出演      :三谷昇、西本裕行、水谷貞雄、伊東達広、林次樹、佐々木睦、楠侑子、福井裕子、椿真由美、塚本千代
上演会場・日時 :俳優座劇場 (2003年4月5日)

別役実の新作で、インモラルな喜劇と言った感じ。 この人も齢を重ねると共に、だんだん作品から毒が薄れてきました。 普通に楽しめるので「入門編」としても最適かもしれないし、別役作品に馴染みのない人を誘っても安心な内容。 でも、やっぱり、劇場から出た後に残るものが少ないというか、何かちょっと物足りない気もしました。

別役本人による舞台紹介(パンフレットより):
ここは、或る大病院の地下の霊安室である。ひとりの女性が息子の遺体の入った柩のかたわらに、ひっそり坐っている。そこに年老いた男性が現れ「この年になるまで死体というものを一度も見たことがないので、一目見せてくださらないでしょうか」と申し出る。このささやかな「無理」が叶えられることによって、次第にあり得ないことが巻き起こってゆく……。

俳優座で別役演劇を観るのは初めてだったのだけど、役者も演出も良い仕事をされていました。 別役の戯曲は、登場人物の淡々とした会話のみから世界を組み立てていくというものだけに、それなりのレベルを有する役者しか演じないし、演出家も腕に自信のある人しか扱わない傾向があると思う。 そのせいもあってか、役者や演出の点で不満を感じる公演には、またぶち当たったことがない。 でも、それなりの質を保ってはいても、やはり集客力は低いので、ある意味では商業主義に陥らない良心的な公演ばかりとも言えるかもしれません。

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