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nocturne 月下の歩行者

劇団      :維新派
構成・演出   :松本雄吉
音楽監督    :内橋和久
舞台監督    :太田和司
上演会場・日時 :新国立劇場中劇場(2003年9月14日)

維新派は、公演のたびに屋外に大きな露天劇場を設営するので有名な劇団(暗黒舞踏団?)。 今回はたぶん初めての屋内公演で、それでエネルギーが余っちゃたからか、或いは折角の機会を有効に活用するつもりだったのか、舞台装置の凝り方には凄まじいものがありました。 地下道、農村、日本統治下の満州の繁華街、という互いに全く異なる舞台設定(しかも細かなところまで良く造りこまれている)が、無理なくパッパッと入れ変わるんです。 モーゼの十戒のように舞台が割れた、と思っていたら回転をはじめ、次は下から何かせり上がってくる、そして上からも何か降りてくるといった具合で、そのうちモビルスーツに変形してしまうのではないかと心配になってきたほどだ(嘘)。

そして、そういうのを可能にしていた新国立劇場の舞台設備も凄い。 僕の職場の建物にしてもそうだけど、最近は行政も道路とか作れなくなってきたので、建てると決めた建造物には公金を情け容赦なくぶち込む、というのが流行りなんだろう。 破産寸前の国家がやることとは思えないけれど、スーパー林道(1時間に1台車が通るだけなのに高規格で立派な道路)とか建設されるよりは個人的には全然OKだ。

ここの舞台は、白塗り系の暗黒舞踏が主菜で、ストーリーはおまけ的な存在。 で、そのストーリーだけど、「話の流れをキチンと説明しない」「ついでに台詞が聞き取りにくい」という団塊世代の演出家に特有と思われる悪い癖が現れていて、結局何のことだかサッパリ分からなかった。 主人公の少年は、いわゆる中国残留孤児のようだったので、たぶん戦争批判とか戦争責任とか、その手の団塊ステレオタイプなお話だったんだろう。 いっそ山海塾の舞台みたいに、お話も台詞も無くしちゃえばスッキリするのになぁ。 あと、2時間20分という上演時間も無意味に長くて、特に公演の前半はダラダラ進行していたこともあり、おもわず爆睡してしまいました。 目を覚まして辺りを見回すと、やはり気持ちよく居眠りこいてる観客が多々見られたので、ダラダラ進行というのは別に僕の主観的なだけの感想ではないはずである。 悪口ついでにもう一点。 この劇団は役者をオブジェのように扱っているので、きっと役者が育つような環境じゃあない気がする。 だって、誰が誰だかの区別すらつかないんだもん。 例えるならば、大学院生を「兵隊」として扱っている研究室状態。 ここに専属している役者の生存率って、きっとものすごく低いと思う。

悪口ばかり書いたけれど、舞台芸術としては、かなり高いレベルにあるし、人にも十分お勧めできる内容でした。 僕としてもけっこう満足できたので、また機会があれば足を運んでみるつもりです。

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