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時の物置

劇団     :世田谷パブリックシアタープロデュース
作      :永井愛
演出     :江守徹
美術     :妹尾河童
出演     :有馬稲子、辰巳琢郎、雛形あきこ、河合美智子、他
上演会場・日時:世田谷パブリックシアター(2004年6月13日)

今年初めての観劇日記となってしまいました。観劇そのものは続けていたのですが、記録を残したくなるほどの舞台にも巡り会えなかったし、それに、最近常に何かに追われているような焦燥感を感じ続けておりまして、更新する気分になれませんでした。それほどセカセカ仕事をしているわけでは無いんですけどね。何かのノイローゼの兆候か?最近、僕より3歳ほど年上の某知人が、ノイローゼが悪化して完全にイカレテしまったのですが、その手のリスクってのは生真面目な人ほど高いような気がいたしますので、僕も人事とは思えません。たまには肩の力を抜かなければいけませんね。そんな折り、久々に気分が晴れやかになる佳作に出会いましたので紹介いたします。

舞台紹介をチラシより無断転載:

時は1961年、高度成長期まっただ中、東京下町の「新庄家」が舞台。
新庄延ぶは士族の生まれ。貧乏だが誇り高く、つい人の世話をやく性分のため近所の人々が出たり入ったりで忙しい。
息子、光洋は教師だが作家になる夢をいまだ捨てきれない。
孫、秀星は大学生。学内改革がらみのきな臭い人間関係に巻き込まれそうになっている。
その妹、日美は家出した母と同じ、女優を夢見ている。謎の女ツル子が新庄家の納戸に下宿している。
そんな折り、伸ぶの娘、詩子から新庄家に初めてのテレビが届く。
下心あっての贈り物だが新庄家の生活と新庄家を取り巻く人々に、思いもかけない変化をもたらすことになる。

ここにあるように、とある大家族の物語。「移り変わる時代」という軸は共有しつつも、中心となる話を作らずに沢山の物語を同時に進行させる形式のお芝居。登場人物も多いし、こういう形式の芝居は、台本がタコだと訳が分からないものとなりがちなのですが、永井愛のシナリオは素晴らしく、みじんの無理さも感じられませんでした。そしてその台本をキチンとこなした俳優陣も誇るべきプロの仕事をされていました。謎の女ツル子を演じた雛形あきこもハマリ役で、演出家の配役に関するセンスも文句なしと言ったところ。脇役では、こしゃくれた中学生を演じた植田真介が良い味を出していました。こういうキラリと光る個性を持つ脇役が1人2人いると、舞台の奥が深まるものだと思います。

同時進行する全ての物語がハッピーエンドになるわけでも、あるいは絶望で終わるわけでも、あるいはどこかにたどり着くわけでもなく、きっと世の中ってこういうものなんだろうなぁ。叶った夢、叶わなかった夢、届かなかった想い、なんだか一つの舞台で人生のいろんな側面を見せてもらった気がします。単純にカタルシスを味わうような芝居も大好きですが、たまにはこういった複雑な味わいをもつ芝居も面白いものです。

それにしても、この手の、雑多な世代の生活が互いに絡み合う物語を作ろうと思うと、どうしても時代設定を古くしなければならないってのが少し悲しいところです。なにしろ、学生寮ですら個室化が進められている昨今、こういう大家族ものとか、あるいは下宿ものに、リアリティを持たせるのは難しいですからねぇ。物語が作りにくくなるほど、奥深さのない人間関係を生きていると言うことは、現代日本社会を構成する1人として認識してしておくべきかも知れません。

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