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第3回統合的陸域圏研究連絡会


日時: 2007年10月14日(日)(日本気象学会2007年度秋季大会第1日)
     18:00〜20:00

場所: 札幌市北区北8条西5丁目
     北海道大学札幌キャンパス 学術交流会館小講堂(大会B会場)

プログラム:
1.西田 顕郎(筑波大学)
      「陸域生態系研究におけるリモートセンシング」
    2.青木 輝夫(気象研究所)

      「GLI及びMODISデータによる積雪粒径と不純物濃度抽出」



講演要旨:


1.陸域生態系研究におけるリモートセンシング」 西田 顕郎(筑波大学)

陸域生態系のリモートセンシング研究の事例と将来計画について発表した。東アジアの広域衛星観測によると、近年、中国とモンゴルの国境付近で顕著な植生変動が観察されることや、2002年に春の訪れが早かったこと、2003年夏の日照不足が顕著だったことなどが明らかになった。これらの知見を地上検証するためのネットワーク研究も進んでいる。最後に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の、衛星による地球観測の計画概要について述べた。

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2.GLI及びMODISデータによる積雪粒径と不純物濃度抽出 青木 輝夫気象研究所

積雪粒径と不純物濃度は積雪が光学的に十分厚い場合、アルベドを決定する重要な要素であるため、衛星リモートセンシングの対象としても重要である。ADEOS-II/GLIの雪氷プロダクトでは、雪氷表面温度、積雪不純物濃度、2種類の積雪粒径(相対的に深い積雪層と浅い積雪層)の抽出を行った。ここでは各アルゴリズムの原理(Stamnes et al., 2007)について述べた。雪氷面温度は主に熱赤外域の大気の窓領域の輝度温度と水蒸気補正用のチャンネルの輝度温度からなる多項式から求めた。積雪不純物濃度と相対的に深い積雪層の粒径は、可視域の波長0.46 μmと近赤外域の0.865 μm2つのチャンネルから同時に求めた。ここで、アルゴリズムでは太陽-雪面-衛星の想定される各幾何学的条件、各粒径、各不純物濃度に対して、放射伝達モデルを用いて予め計算しておくルックアップテーブル法を用いた。相対的に浅い積雪層の粒径は近赤外域の1.64 μmのチャンネルから、同様にルックアップテーブル法を用いて求めた。2種類の粒径の違いは、氷による光の吸収の強さが各波長によって違うことを利用している。

 ADEOS-II/GLI及びTerra/Aqua/MODISと同期して、北海道東部やアラスカにおける地上検証を行った(Aoki et al., 2007)。その結果、衛星から、求めた雪氷面温度は地上の現場観測値と比較的良い精度で一致した。不純物濃度は衛星による観測値の方が地上よりも低い値となった。その理由は、アルゴリズムで想定した不純物モデル(すす)と実際の不純物(主にダストとすす)の違いによるものである。相対的に深い積雪層に対する粒径の場合は数センチ程度の積雪層の観測値とほぼ一致した。一方、相対的に浅い積雪層に対する粒径は、濡れ雪に対して過小評価となった。また、地上観測値と相関が最も良かった積雪層は表層であった。濡れ雪における過小評価の原因として考えられる要因は、サンクラストなどアルゴリズムで想定していない問題が考えられる。

 ADEOS-II/GLIによって求めた積雪物理量の画像解析の結果(Hori et al., 2007)、各積雪物理量の季節変化、空間分布の変化、物理量間の関係などが明らかになった。積雪粒径や不純物濃度は高緯度域、標高の高い場所ほど小粒径、低濃度であった。グリーンランドに注目すると、粒径は夏には増加するが、不純物濃度は夏でも低い状態が維持した。積雪表面温度と積雪粒径の間には明らかな関係があり、この関係を利用して、その積雪が変化しにくい安定したものかどうかが分かる。また、融雪のオンセットを検知することも可能である。2種類の積雪粒径の比をとることによって、積雪の性質を推定できる可能性がある。南極氷床上においても、積雪粒径の季節依存性、高度依存性が顕著に見いだすことができた。特に、氷床上の粒径は今後温暖化に伴う積雪の融解の前兆として捉えられる可能性がある。

References
 Stamnes, K., W. Li, H. Eide, Te Aoki, M. Hori, and R. Storvold, ADEOS-II/GLI snow/ice products: Part I: Scientific basis. Remote Sens. Environ., doi:10.1016/j.rse.2007.03.023, (in press).
 Aoki, Te., M. Hori, H. Motoyohi, T. Tanikawa, A. Hachikubo, K. Sugiura, T. J. Yasunari, R. Storvold, H. A. Eide, K. Stamnes, W. Li, J. Nieke, Y. Nakajima, and F. Takahashi, 2007, ADEOS-II/GLI snow/ice products: Part II - Validation results using GLI and MODIS data. Remote Sens. Environ., doi:10.1016/j.rse.2007.02.035, (in press).
 Hori, M., Te. Aoki, K. Stamnes, and W. Li, ADEOS-II/GLI snow/ice products: Part III - Retrieved results. Remote Sens. Environ., doi: 10.1016/j.rse.2007.**.***, (in press).


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