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2017年秋(気象学会大会@札幌)


概要

テーマ:「近年の気候変動に伴った大気陸面相互作用の変化」
日時:2017年10月30日(月)(大会初日)18:00〜20:00
場所:北海道大学 学術交流会館 第1会議室 (学会C会場)

内容(告知文)

20世紀後半以降の気候変化(ベースラインの変化と極端事象の増大)は顕著であり、例えば、全球平均地表気温の2001〜2010年平均値は、1961〜1990年平均値と比べ約0.5℃上昇している。このような気候変化に伴って、大気陸面間相互作用にも大きな変化が生じているという報告が多く得られている。その一方で、衛星リモートセンシングや地上観測から得られた各種のデータは充実し、また様々なモデルが利用可能となるなど解析手法も大きな発展を遂げている。今回の研究会では、近藤雅征氏(千葉大学・CEReS)、佐藤友徳氏(北海道大学・環境)、山田朋人氏(北海道大学・工学)の3名を話題提供者に招き、近年の気候変動に伴った大気陸面相互作用の変化について、これまでに分かってきたこと、それを踏まえて、大気陸面相互作用メカニズムの解明や気候変動予測を推し進める上で今後何が必要であるかについて議論したい。

プログラム

  1. 佐藤友徳(北海道大学・地球環境科学)
    「北ユーラシアの熱波や降水に関係する大気陸面相互作用」
  2. 山田朋人(北海道大学・工・環境フィールド工学)
    「人間活動の影響を考慮した陸面過程と大気陸面相互作用」
  3. 近藤雅征(千葉大学CEReS)
    「近年の地球温暖化現象に対する陸域生態系の役割」
  4. 総合討論

開催報告

告示文通り、今秋も気象学会の会場をお借りして、勉強会を開催しました。演者は、北海道大学の佐藤友徳さんと山田朋人さん、千葉大学の近藤雅征さんの3名で、ご発表・質疑応答とも盛り上がり、最後には時間が足らなくなり総合討論を途中で打ち切りざるを得ないほどでした。

佐藤さんと山田さんからは、土壌含水率分布の自然変動・灌漑に伴う人為改変、これらが大気陸面相互作用を通じて気候へ与える影響について、お話し頂きました。そのような気候感度の強さが、乾燥地や湿潤地によって異なる事、また遠く離れた地域にもテレコネクションにより影響をもたらす場合があることなどについて、観測及びシミュレーション結果を利用した解析結果をお示し頂きました。

山田さんのご発表で個人的に印象深かったのは、灌漑による水利用量という、重要でありながらも統計データが不完全な値について、Irrigation Water Demandに基づいた推定方法があるという点でした。これは一種の逆解析で、穀物収量と気候要素から、その収量を実現する上で不足する天水量を推計するもので、作物モデルにも色々な使い方があるものだと感心させられました。その一方で、モデル開発者の一人としては、モデル出力が真値的に利用されるケースもあるのだと、身が引き締まる思いもしました。

近藤さんのご発表は、過去の地球史における大絶滅という、大きな時間スケールの話題から始まりました。地球史上最大の絶滅事変となったペルム紀末の大絶滅事変は、光合成活動が不活発になった後に生じており、大規模な火山活動を切っ掛けとした植物の死滅が大気中CO2濃度を上げ、海洋酸性化と海水面温度43℃にも到達する程の温暖化が生じたと考えられているそうです。これに対して、化石燃料の燃焼を主要因としている現在の温暖化においては、主にCO2肥沃効果と過去の土地利用からの回復により、植物の生産性が、全球平均としては増加していると見積もられていることをお話し頂きました。

このように大変興味深い話題をご提供頂きながらも、参加者数が20名弱(演者3名、世話人・世話人OB4名、一般聴講者約10名)と小規模での開催となり、勉強会の開始時刻や、宣伝の行い方など、運営側としての反省点も感じました。

文責:佐藤永


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