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ピルグリム

劇団      :新国立劇場プロデュース シリーズ「現在へ、日本の劇」1
作・演出    :鴻上尚史
出演      :市川右近、富田靖子、山本耕史、他
上演会場・日時 :新国立劇場中ホール(2003年1月25日)

つまらなかった。 こんなんだったら、同日に他所でやっていた月蝕歌劇団の実験公演に行けば良かった。 公演中、ただ腕時計を見ながら「早く終われ、早く終われ」と念じていました。 芝居というのは、まあ席の位置にもよるのだけど、一度上演が始まってしまうとエスケープすることが出来ないので、つまらない芝居にあたってしまった場合は苦痛以外の何物でも無い。 でも鴻上氏の固定ファンと思われる一部の観客の方々には大受けしているんだ。 うえぇ〜、今のギャグ大笑いするほど面白かった? 失礼だけど、信者?

お話しを紹介すると(書くのが面倒くさいのでパンフより勝手に転載): 連載を打ち切られた流行作家・六本木実篤は、編集者・朝霧悦子の説得を受け、最後の勝負をかけた長編冒険小説を書き始めた。 小説の中の登場人物達は、それぞれの運命を背負いながら幾たびかの障害を乗り越えて目的地である”オアシス”へと旅を続ける。 謎の黒マントの男に呼び出された六本木は、あろうことか執筆中の小説の世界へ連れ込まれた・・・。

・・・これ読んだだけで、いかにもダメっぽい雰囲気がありありでしょう? だいたい小説家の空想が現実の世界となって話が進行するなんてのは、有史以来数限りなく繰り返されてきた安直なパターンの一つ。 面白ければ安直でも一向に構わないのだけれども、話の筋は分かりにくいし、でも浅いし、だから説得されないし、それに演出のセンスもあまりに古い。

そんな作・演出をしてしまった鴻上君だけど、かって彼は第三舞台という劇団を率いて、前世紀末に一つの時代を築いた男なのです。 彼の舞台の特徴は、全編にダンスシーンが挿入されていて、とにかく明るく楽しいこと。 80年代以前の日本の演劇とは、堅苦しい前衛ぶったやつとか、アングラ臭いものだったそうなので、スパーンと明るく格好良い舞台が受けたんでしょうね。 夢の遊眠社が超人気劇団だったのと同じ原理だ。 でも夢の遊眠社が解散してから今年で11年、そろそろ昔の想い出にしがみつくのは止めようぜ。 そういうの飽きた。

役者にも、イマイチ印象に残るような個性的な人はいなかったです。 皆さん、それなりの技術を持った方々ではあったのだけど、「でもあなた達、平均的な人生が嫌で役者やっているんでしょう? 自分の個性を表現したくって役者やっているんでしょう? そんな演技やっていて良いのかよ!?」とネチネチ問いつめてやりたい気分だ。

関係ないけど、この公演の翌日が三谷幸喜の新作「オケピ」のチケット発売日だった。 すっかり忘れていて、夜中に@ぴあへアクセスしてみたのだけど、たった一日で全公演日程のA席からSS席12600円也までキレイさっぱり無くなっている! 平日昼間の公演も随分あったのに、、。 他方、かってプラチナチケット必至だった鴻上の公演では空席もチラホラ目立ったりと、まったく盛者必衰ですな。 おい鴻上君。 このまま負けていて良いのか? 「万人に受ける舞台を創れ」などという無茶かつ無意味な事は期待しない。 だけど、何をやっても喜んでもらえるオルグ済みの固定ファンだけを相手にしていては、これから先細るだけだぜ。 是非とも、もう一度花を咲かせてくれたまえ。

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