「陸域生態系の物質循環」
http://www.jpgu.org/meeting_2018/SessionList_jp/detail/A-CG40.html
日時:2018年5月24日
場所:幕張メッセ
主コンビーナ:加藤知道(北大農)
副コンビーナ:平野高司(北大農)、佐藤永(海洋研究開発機構)、平田竜一(国立環境研)
陸域生態系の水・炭素・窒素を初めとする物質循環は、地球の気候に大きな影響を与えている。それらを把握するために、生物量調査、安定同位体比測定、渦相関法・チャンバー法を初めとする地上観測や、リモートセンシング、シミュレーション、メタデータ解析などの様々な手法が開発され、植物バイオマス・温室効果ガスフラックスや、森林火災・大気汚染の生態系への影響などの各種の現象を多角的にとらえる努力がなされている。
たとえば、JapanFluxでは、微量気体(CO2やメタン)と水蒸気のフラックスに関連した観測をベースとしているが、モデラー・リモートセンシングの研究者などとの協働研究も展開している。また、統合的陸域圏研究会では、大気境界層から土壌内わたる物理的・生物的諸過程の理解に向けて、様々な分野の研究者間における情報交換や研究協力関係の構築を行ってきた。
本セッションは、このように分野や手法を特定せず、水・炭素・窒素・その他物質の循環における陸域生態系の役割に関する研究発表を広く歓迎する。なお、本セッションは、昨年度のA-CG47(タイトル同じ)を引き継ぐものである。
松本一穂
沖縄の亜熱帯常緑広葉樹林における水・熱・炭素循環研究
高橋善幸
CO2フラックス長期観測から見るカラマツ林での間伐が炭素収支に与える影響
村山昌平
飛騨高山冷温帯落葉広葉樹森林観測サイトにおける炭素収支及び大気中CO2濃度の年々変動及び長期トレンド
寺本宗正
東広島常緑照葉樹林における微生物呼吸に対する長期的な温暖化の影響
Irina Melnikova
Estimation of leaf area index in the mountainous forest of Japan by application of a simple model on the Landsat Operational Land Imager imagery
伊勢武史
ディープラーニングでリモートセンシングを「再発明」する
酒井佑槙
The simulation model of energy partition in leaf scale to estimate GPP from SIF
宮内達也
GOSATによって観測された太陽光励起クロロフィル蛍光の総一次生産推定への寄与と陸域生態系モデルへの適用可能性
佐藤永
Simulating topographic controls on the abundance of larch forest in eastern Siberia, and its consequences under changing climate
渥美和幸
プロセスベースの植生モデルによる総一次生産力と蒸発散量の推定の全球評価
伊藤昭彦
東アジア地域におけるメタン収支の統合的評価に向けて
[招待]
辻本克斗
葉の環境への順化がクロロフィル蛍光・分光反射・光合成の環境応答に与える影響
塩垣美森
沖縄の亜熱帯林常緑広葉樹林における幹枝呼吸量の解明
速水眞誉
沖縄島の亜熱帯常緑広葉樹林における土壌呼吸とその構成成分
矢崎友嗣
首都圏の植生管理された森林林床の土壌呼吸の計測
王 小醒
Relationships between local surface soil moisture and spring dust source areas in temperate grasslands of Inner Mongolia
加藤知道
Relationship in anomalous changes in solar-induced chlorophyll fluorescence to the environmental factors for last 10 years
平田竜一
Carbon emissions caused by land use change in Borneo island
Wu Lan
Effect of typhoon intensity and frequency on forest dynamics and material cycle using the Spatially Explicit Individual-Based Dynamics Global Vegetation Model (SEIB-DGVM)
宮本裕美子
Climatic factors influencing soil respiration fluxes in a taiga forest of northeastern Siberia, revealed by 9 years of field measurements
額尓 徳尼
ウランバートル市におけるゲルからのCO2排出量のマッピング
井上忠雄
Plans for developing an Earth system model with CH4 dynamics
今年も、口頭11件、ポスター11件という多くの発表が行われ、活発な議論が展開されました。特に招待講演者である伊藤昭彦さんのご発表は、陸面のメタン収支を推定する研究を包括的に紹介するものであり、大変勉強になるものした。伊勢武史さんのご発表は、急速に発展しつつある画像自動技術を、いかに地球科学の研究に取り入れるかについて先鞭をつけるもので、大変印象的でした。
JpGU大会は、昨年初めてアメリカ地球物理学連合(AGU)との合同大会として開催され、その影響か、今年度も大会参加者の国際色が豊かでした。完全に英語で開催されるセッションの数も増えてきたように感じます。本セッションの使用言語は、特に定めておらず、大多数の方が日本語で発表を行っています。ですが、今後は、日本語で発表する際にも資料は英語で作成することをお願いするなど、国際化に対応した気配りが必要かもしれません。
セッション同日の夜に開催された恒例の懇親会も盛り上がりましたが、大会最終日の夜のためか、例年よりも参加者人数が少なかったのが気になりました。こちらについても、もう少し宣伝が必要だったかなと、主催者の一人としては反省を感じました