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相島日記 2002年春

  5月10日〜5月14日の記録

● 5月10日 (曇り)

調査地へ向かう途中

朝一番のフェリーで島へ渡る。 作業もあらかた片づいてきていて、あと2〜3日で撤収することができそうだ。 これだけ期間が短いと、仕事をした気分にならない。

昨晩は少し雨が降り、まだ下草が濡れていそうだったので、昨日買った長靴を早速履いて作業に出ることにした。 長靴を履くことなど小学生以来初めてで、蒸れるかと思ったけど、この時期であれば全然そんなこともなかった。 ソールも結構しっかりとしたパターンが深く刻まれていて、泥道を歩いていても安定感がある。 これがディスカウント店で899円也。 手入れも簡単だし、2万や3万も出してフィールドブーツを買うのがばからしくなる。 けど、やっぱり靴は基本的な仕事道具なので、娑婆に戻ったら早めに買っておくことにしよう。

連日寒い日が続いていて、なおかつろくな食事をしていなかったので、少し風邪気味のようだ。 食事に関しては、島では水が不味い(水道があるだけで感謝しなくてはいけないのだけど)事に加えて、買い物も不便なので、気合いを入れて料理をする気にならないのだ。 島のあちこちに小さな畑があることをみると、殆どの住人の方は野菜を自給自足しているようである。 若い人が、どんどん島から離れてしまうというのも、まあ仕方がない事なのだろうと思う。

朝:パン、目玉焼き
昼:すり胡麻を大量に入れたホットケーキ、ヨーグルト、キウイ、牛乳
夜:豚肉みそ漬け焼、小松菜と油揚げの味噌汁


● 5月11日 (曇り)

借家二階

今日は早朝より、住人の皆さん総出で穴観音まわりの草取りをしておられた。 それで、普段は静かな道に結構人通りがあって、作業中に何度か話しかけられた。 一般的に野外でデータを集めていると、奇異な目で見られたり、不審者扱いされたりと、あまり愉快な思いをしないことが多いのだけど、この島に関してはそのような事は一度もない。 どうやら当研究室の諸先輩後輩方が、猫の交尾を観察したり、猫の糞尿を集めたり、録音した猫の発情声を再生して回ったりと、様々な快挙を成してくれたおかげで「怪しいけど、とりあえず無害な人達」と認識されているようだ。 有り難いことである。

今日の労働時間は1時間半。 残る作業は、3〜4個の花について、これらが萎れる日時を見届けるだけだ。 結局今回の調査では、雨やら曇やら寒いやらで、最後まで天気には恵まれなかった。 今日も少し肌寒かったのでこたつを入れる。

朝:納豆、卵、小松菜と油揚げの味噌汁
昼:すり胡麻を大量に入れたホットケーキ、ヨーグルト、キウイ、牛乳
夜:カレーライス、ピースご飯、ヨーグルト

● 5月12日 (快晴)

島の北側

島で唯一のおみやげ物屋にて買った蒲鉾を朝食に頂く。 魚の素直な甘みがして、なかなか美味しい。 結局、島での買い物は、この170円の蒲鉾1つだけで、あとはジュース1本買わなかった。 魚を買おうと思ったのだけど、1人分しか料理しないのに、いちいち魚さばくの面倒ですよねぇ。

久しぶりに晴れたので、作業の後でハイキングに出ることにした。 小さな島ながら、まだ全ての道路をコンプリートしていなかったのだ。 うららかな晩春の日に奇麗に整備された道を、ゆっくりと歩くというのは気分の良い物である。 島をほぼ一周したところで、海岸沿いに火葬場を発見。 晴れた日の人気のない海岸沿いで見る火葬場というのは、なかなかにシュールな光景である。

今日の昼ご飯もホットケーキ。 やっとのことで賞味期限切れのホットケーキミックスを使い切ることができた。 ホットケーキミックスは、たいてい16枚分(8食分くらいか)が1単位で売られているので、こんな機会でも利用しなければ、なかなか全部使い切れない。 昼過ぎ、テレビを見ているとM1生と卒研生の計3人がいらっしゃった。 調査の下見に来た帰りとのことだ。 調査地のチェックもいいけれど、彼ら自炊はできるのかな。 簡単な調理くらいはできないと、ここでの生活は成り立たないと思うぞ。

朝:納豆、蒲鉾、豆腐と油揚げの味噌汁
昼:ホットケーキ、ヨーグルト、キウイ
夜:カレーライス、ピースご飯


● 5月13日 (晴れのち曇り)

調査地近く

一度に全ての荷物を持ち帰るのは難しいと判断して、今日明日と2日がかりで引き上げることにした。 車が入れないというのは、こんな場合に不便なものだ。 とりあえず、一番の大物であるパソコンを大学まで運ぶ。

研究室にて溜まった用件などを片づけた後、ずっと顔を出せないでいたスポーツクラブへと、エアロビクスに出かけた。 それで、エアロビのインストラクターの若々しい姿が、老人ばかりを見慣れた島帰りの僕の目に眩しかった。 やっぱり娑婆はいいなぁ、と思った。 今回の野外調査にて、若い女性を見ることのない生活を半月ほど続け、イスラム世界の男達の気持ちが少し分かった気がする。 こんな生活を延々と続けていたら、そりゃテロの一つも起こしたくなるよ。 わかるわかる。

朝:納豆、卵、豆腐と油揚げの味噌汁
昼:梅干しのおにぎり
夜:ホカホカ弁当

● 5月14日 (曇り)

借家の窓からの光景

朝一番のフェリーにて島へ渡り最後の作業、そして朝10時50分発のフェリーにて荷物の引き上げ。 相島は野生に近い植生も残っているし、なにしろ前線基地が整備されていて非常に便利なので、機会があればまた調査に使いたい。 福岡近郊に在住している方には、日帰りのハイキングにもお勧めだ。 良く整備された道路を、車に脅かされずにノンビリ歩けるというのは、今では贅沢なことであると思う。

午後に、次の調査予定地である立花山を視察した。 ここも僕の自宅からごく近所、というか部屋のベランダから見える山である。 結構身近なところにも、調査に使えるポイントがあるものだ。







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