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動物媒花の性表現進化についての理論的解析


研究の背景

種子植物の性表現としては、主に以下の4タイプがある。

Hermaphroditism 集団は両性株のみから構成される
Gynodioecy   集団は両性株と♀株から構成される
Androdioecy   集団は両性株と♂雄株から構成される
Dioecy     集団は♀株と♂株から構成される

自然界における各性表現の頻度は、互いに大きく異なる。 最も一般的であるのはHermaphroditismであるが、GynodioecyやDioecyも比較的よく観察される。 他方、Androdioecyは極めて珍しい性表現であり、わずか数種のみが記載されているにすぎない。

研究の目的

@どのような条件下で、それぞれの性表現タイプが進化するのかについて理論的な検討を行う。
Aその上で、「なぜ各性表現の頻度が大きく偏っているのか?」という問題を議論する。

結果の概要

動物媒花を有する植物を仮定した解析の結果、送粉者誘因器官への資源配分量に対する送粉動物訪問数(以下、訪問カーブ)が、凸型曲線であることを仮定した場合、高い自殖率と強い近交弱勢の元で、Gynodioecyが進化的に安定となることができると予測された。 他方、訪問カーブに凹型曲線を仮定した場合、広いパラメーター範囲でAndrodioecyが進化的に安定となることができる事が示された。 しかし、Androdioecyは極めて稀な性表現であり、後者の予測は現実と矛盾している。 よって、この検討から、訪問カーブは一般的に凸型曲線であり、この特性がAndrodioecyを稀な性表現としていることが予測された。

この研究の売り・今後の課題

動物媒植物の性表現進化を説明する上で、訪問カーブの形が極めて重要な働きをもつことを初めて理論的に示した。 今後は、この予測を確かめるため、幅広い分類群において訪問カーブを調査し、これが一般的に凹型曲線であるのか凸型曲線であるのか確かめる必要があるだろう。

資料

スライド (別ウィンドウで開きます)

レジュメ (やや専門的な内容、表示にはAcrobat readerが必要です)

論文

Sato, H. (2002) Evolution 56(12), 2374-2382.
"Invasion of unisexuals in hermaphrodite populations of animal-pollinated plants: Effects of pollination ecology and floral size-number trade-offs". [Abstract], [PDF]

Sato, H. (2003) Evolution 57(3), 690-690.
Invasion of unisexuals in hermaphrodite populations of animal-pollinated plants: effects of pollination ecology and floral size-number trade-offs (ERRATUM) [PDF]








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