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フィールド日記 2002年秋


   9月1日〜9月7日の記録  

● 9月1日 (雨のち晴れ)

今日も雨の中での作業が終わってから急に晴れてきやがった。 まただよ畜生。 こういう場合には、一体誰に怒りをぶつければ良いのだろう? 夜中、明日の天気の見当をつけるために外に出ると、満天の星空。 そのまま20分くらい見入ってしまった。 天の川をこれほどハッキリと見たのは、たぶん初めてだと思う。

朝食:パン、牛乳、ヨーグルト
昼食:スパゲッティー、トマト&ピーマンのソース
夕食:G先生が何かの会合で頂いた弁当を更に僕が頂きました。+茄子の味噌汁。
入浴:赤川温泉(入湯料500円)

露天風呂(滝が見える)、水風呂あり。ここは湧出時の温度が20度前後という冷泉で、これをボイラーで暖めて湯にしているとのこと。湯は青みがかった白濁色で、非常に美しい。辺りには、うっすらと硫黄の臭い漂っており、ニキビなどは一発で直りそうな雰囲気だ。ただ、今日は日曜日だった為に、かなり混んでいた。さらに洗い場のスペースが3人分しかなかったので、体を洗うためには、スペース確保のチャンスを奪い合う必要があった。

● 9月2日 (快晴)

実習所から阿蘇を望む

朝目覚めて外を見ると、完璧な青空。 こんな天気の日には、実習所から遠く阿蘇の方まで広々と見渡すことができて、実に気分がよい。 野外調査もはかどりました。 午後、こちらのラボのN助手よりハガクレツリフネソウの写真を撮りたいので案内して欲しいと申し出があり、一番近所の自生地まで御案内する。 そのついでに、実習所のごく近所に色々な植物が観察できる所があるとのことで、大分県畜産試験場の敷地内にあるハイキングコースへ連れて行ってもらった。 この近所は調査地を探すために徹底的に調べ回ったはずなのに、こんな場所があったとは。 ただ、ハイキングコースなので、調査地には使えないだろう。 帰り道、九大実習所の敷地内でキジの雛が群れで歩いているのに出くわした。 まだ飛ぶことができないようで、まるでクイナのようにチッチッと歩いている様は、実に可愛いかった。

朝食:納豆、卵、昨日の味噌汁
昼食:残り野菜を沢山ぶち込んだラーメン
夕食:青椒牛肉絲。ジャガイモとキャベツの味噌汁
入浴:黒川温泉 三愛高原ホテル絶景の湯(入浴料 手形利用で400円)

黒川温泉露天風呂巡りの第二弾。洗い場は少し使いにくかった。ジャクジーもあったのだけど、これもイマイチ。泉質は透明で無色無臭。「絶景」というほどの風景は見えないものの、空が広く見えて気持ちの良い露天風呂でした。ホテルが食事の時間帯(午後7時頃)に行ったので、
入浴:客は僕一人。大人げもなく、久しぶりに水死体ごっこを楽しみました。

● 9月3日 (快晴)

無駄足の途中で

今日も昨日に引き続いて快晴。 放射冷却が強まった為か、朝晩は結構冷え込むようになって、寝るときなども布団を二枚重ねてちょうど良いくらいだ。 周りを見渡すと、空は高いしススキも花序を出しており、早くも秋の気配が感じられる。 下界で残暑に苦しんでいる連中を考えるとザマーミロといった感じ。 でも僕自身も、今月12日には就職の面接のため横浜まで行かなくてはならない。 リクルートスーツを着ていくことになるのだろうけど、それを思うと今から憂鬱な気分だ。 日本の夏は高温多湿で、しかも年々酷くなってきているので、もうそろそろ夏の正装というものも改めるべきだと強く思う。 石油危機の頃に「省エネルック」というものあったそうだけど、あれを役所辺りから復活させてもらえないだろうか?

夜中、車を走らせていると、九大実習所の敷地内でキツネを見かけた。 ここの裏手は直ぐに久住連峰なので、いろいろな動物が出るみたいだ

朝食:納豆、卵、昨日の味噌汁
昼食:昨日のおかず
夕食:胡瓜とツナの炒め合わせ、カボチャの味噌汁
入浴:国民宿舎 久住高原荘(入湯料500円)

詳細は8月26日の日記を参照して下さい。本当は産山村の「花のおんせん館」というところに行ってみたのですが、定休日で閉まっていまして、別の温泉を探すのも面倒くさかったので宿舎に一番近いこの温泉に再び入りました。

● 9月4日 (快晴)

七里田温泉

黒川温泉の公式ホームページ[外部リンク]を見つけた。

露天風呂一覧のページがあったので見てみると、全24露天風呂の写真、泉質、混浴風呂の有無などが記載されている。 混浴? あっ、混浴風呂がなんと13カ所もあるではないか! こっ、これは知らなかった。 さっそく明日より趣向を少々変えて、混浴風呂巡りを敢行することにする。 その様子は逐一報告するので、乞うご期待(?)。 それにしても、閲覧者の需要を素晴らしく理解しているホームページである。 温泉街の公式ページとは、こうあって欲しいものだ。

、、、こういうことを書いていると、とある僕の友人を思い出す。 彼は高校の同級生で、高校時代はまじめで純朴な少年であった。 しかし、大学時代にナンパのプロを称する怪しい親父と知り合ってからは、その親父とつるんで、路上で女性に声をかけまくったり、丸一日混浴風呂でねばって気分が悪くなったりと、見事な堕落ぶりを見せつけてくれたものだ。 それで、僕のやろうとしている事のレベルが彼の学生時代と同じなのが少々気になるわけなのだけど、別に僕は一日中風呂でねばったりしないので、まあOKだろう。

ちなみにそんな彼は、その後、代々木公園に寝泊まりしてルンペンのまねごとをしたり、その事を僕が吹聴して回ったばかりに悪評が郷里にまで届いて実家に帰れなくなったりと、色々あったものの、今では自営のSEとして活躍しています。 何でも月に70万円稼ぐとのこと。 当時、順風満帆の東大生だった僕が失業して混浴風呂巡りとか言っているわけで、いやぁ、人生ってどうなるかわからないですね。

朝食:納豆、卵、胡瓜の南蛮漬け、昨日の味噌汁
昼食:昨日のおかず
夕食:煮しめ(七里田温泉の地元物産品販売コーナーで買ってきたお総菜)、胡瓜の南蛮漬け、豆腐とタマネギの味噌汁
入浴:七里田温泉 木乃葉の湯(公共温泉 入湯料300円)

露天風呂、打たせ湯、無料休憩室(和室)あり。また地元で生産された野菜や加工食品のちょっとした販売コーナーがあり、いずれの商品も安かった。泉質は褐色で無臭。長湯温泉から炭酸ガスを抜いたようなお湯で、白いタオルが茶色く染まってしまう点も同じ。まだ明るい時間帯に、休憩室で田園風景を眺めながら湯上がりのアイスクリームを食べていると、失業というのも悪くはないなという気分になった。

● 9月5日 (快晴)

引きちぎられたテープ

調査に使っている個体が一本、引き抜かれていた。 悪戯されたか!と思って調べてみると、ナンバリングの為に貼り付けてある黄色いビニルテープが、不自然な形で千切れている。 さらに調べてみると、千切れたテープに小さな穴が2つ並んで開いていて、なんだか牙の跡みたいだ。 この辺りは蛇がウジャウジャいるので、おそらく蛇が黄色いビニルテープを蝶か何かと勘違いして、喰らいついて引っ張ったのだと思う。 幸い、引き抜かれていたのは、この一本だけで、調査に大きな支障は出ないはずだ。 でも、もし続くようだったら、テープの色を変えるとか、蛇を片っ端から捕まえるなどの対処が必要になる。 後者の方法をとった場合には、蛇の肉は美味しいらしいので、悪戯蛇の試食レポートをここに掲載します。

混浴風呂巡りはまだ。 週末までマテ。

朝食:納豆、蒲鉾、沢庵、昨日の味噌汁
昼食:昨日のおかず、冷や奴
夕食:カボチャと豚バラ肉のカレー風味煮込み、ジャガイモとキャベツの味噌汁
入浴:産山村 花の温泉館(公共温泉 入湯料500円)

露天風呂、ハーブ風呂、打たせ湯、サウナ、水風呂、無料休憩室(和室)あり。泉質は、緑がかった白濁色。水風呂には日本名水百選の池山水源の水が張ってあるが、ものすごく冷たくて5秒と入れない。そのうち心臓麻痺で死ぬ老人が必ず出るだろう。この「花の温泉館」は、ある種の複合施設となっていて、温泉施設の他にもパン工房とか、地元産物販売所、レストラン、温室、精米用水車などの様々な施設が入っている。近所なので、また行ってみようと思う。

● 9月6日 (快晴)

ほていの湯

僕宛のメールが、登録者約1000人の某メーリングリストに誤って配信されていた。 就職関係の内容だったのだけど、結構やばい内容が含まれていて、送信した某先生は真っ青になったことだろう。 なにしろ書き出しが、「佐藤永さま 内々の連絡ですのでご了解ください」なのだ(要するに秘密の内容なので口外しないでくれという事ですね)。 配信されたのは業界関係のメーリングリストだったので、これでその連絡は内々どころか、一気に日本中の業界関係者に広まったわけだ。 まあ僕にとっては、求職中であることの良い宣伝になったので、一向に構わないけど。 で、差し支えない範囲での主な内容はというと、来週の面接についての連絡事項と、内部事情的に採用できない可能性が高くなったので御覚悟願います、の2点。 やれやれ、またダメなのかしらん。 いいかげん福岡を脱出したいんだけどなぁ。

朝食:納豆、冷や奴、沢庵、昨日の味噌汁
昼食:昨日のおかず、チャンポン
夕食:カップラーメン(昼食べ過ぎたので、軽食で済ませました)
入浴:ほていの湯(公共浴場 入湯料500円)

久住町の郵便局で用事を済ませた帰りに、近所の温泉に寄りました。露天風呂、薬草風呂、水風呂、サウナ、打たせ湯あり。ここにも地元産品の販売コーナーがありました。泉質は、黄土色で無臭。

● 9月7日 (曇り時々晴れ)

Evolution誌からtentatively acceptされていた僕の論文が正式に受理された。 前に掲示板に書いたけれども、ここの編集局の事務処理は、昼飯前のタイ人なみに遅い。 今度の受理についても、tentatively accept原稿には些細な修正しかしてないのに、修正バージョンの送付から今日まで1ヶ月近くも待たせやがった。 うっ、しかも1ページにつき55$も取りやがるのか(注:多くの学会誌では、著者が掲載費用を払う必要がある)。 単著だし、今は何のgrantも持っていないので、また自腹だよ。 原稿の長さは、ダブルスペース書きの本文が24ページ、Tableが4枚、Figureが3枚。 校正刷りができないと正確にはわからないけど、出版論文の長さは6〜8ページといったところか。 米国進化学会の会員になれば年間12ページまで無料で掲載できるのだけど、当分Evolution誌に投稿するつもりは無いからなぁ。

それにしても、論文書きという仕事は、なかなか楽になってくれないものだ。 これまでFirst authorの論文を3本通してきたが、いずれの論文も、僕の情念が字句の一つ一つに貞子の呪いのビデオなみの高密度で込められている。 夜中とか勝手に字がウニウニ動いていそうだ。 現在修正バージョンを作成している花の寿命論文についても、すでに2誌からリジェクト(掲載拒否)を喰らっていて、苦労の真っ最中である。

夜中、宿舎のテレビで「北の国から 最終章」を見る。 アングラテント劇団の覇者、唐十郎が演ずるトド撃ちの男が、最高に格好良かった。 僕も晩年は、あんな風に威厳と滑稽さ、そして怖さと優しさを兼ね備えたタフな老人になりたいものだ。 うーうー、うううううー♪ あーあー、あああああー♪

「あんな陰気な兄妹でも、幸せになれたわけで。 僕と純とでは、歳が近くもあり。 父さん。 ボキの幸せは、いつ来るのでしょう」

朝食:納豆、沢庵、豆腐の味噌汁
昼食:スパゲッティ、トマトとモンゴル豆のソース
夕食:高野豆腐、干し椎茸、モンゴル豆の煮物
入浴:黒川温泉 黒川温泉ホテル(入湯料 入湯手形利用で400円)

打たせ湯あり。泉質は透明で無色無臭。内湯は男女別、露天風呂が混浴という形態。混浴露天には、腹の突き出た親父が一人だけいた。残念。



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